YYJK講演会は、当会の顧問の先生方やお世話になっている専門家の方をお招きしてお話をうかがう、全6回の講演会です。第2回からは会場を旧柳下邸に移し、横浜でも最大規模の洋館付き住宅のすばらしい空間のなかで実施しました。
場所:根岸なつかし公園 旧柳下邸 (横浜市磯子区下町10-6 TEL045-750-5022) 主催:よこはま洋館付き住宅を考える会(Y.Y.J.K.) 共催:根岸なつかし公園 旧柳下邸 定員:30名 参加費:資料代 500円(当日払い)
▲(左)旧柳下邸の全景(右)見学会の様子
▲講演会の中村氏と星氏
ピサの都市形成史と歴史的建物: ピサはイタリア中部トスカーナ地方の歴史的な都市。都市の中心部には中世、ルネサンス、近代へと続く都市の歩みが刻み込まれている。まず、その都市形成の歴史や今に残る歴史的建築物についての話。 ドゥオーモ広場: ピサは世界の七不思議の一つに挙げられている斜塔で有名な都市でもある。芝生の緑が美しいドゥオーモ広場を形成する、大聖堂、鐘楼(斜塔)、洗礼堂、墓所。それぞれの建物についての詳しい解説。 保存と改修について: 黒田氏が勤務されていたフィレンツェのM.カルマッシ建築設計事務所の仕事である、中世の典型的な住宅「casa-torre」(塔状住宅)の改修、13世紀に起源を持つサン・ミケーレ・イン・ボルゴ地区の再生計画をとおして、イタリアにおける保存・再生の考え方や方法を紹介。
講演では、美しい写真と図面が仮設スクリーンに写し出されました。ピサとフィレンツェで勉学と仕事を経験された氏のお話は、観光ガイド的楽しさと同時に時間をかけてイタリア人の暮らしや住まい方を見聞されてきた厚みが感じられる興味深いものでした。
日時:2003年3月15日(土)午後1時〜4時 場所:旧柳下邸 参加者:30名
「命」: 文化財に指定されているような建物の改修に携わっているとものの「命」というものを強く感じる。われわれの業界では鉄は400年、コンクリートは100年、樹齢千年の檜は千年の命といわれていて、命というものを非常に大切にしている。木の建物を木の命のままに残していくことは当り前のことだと思う。一人一人の命には限りがあるが、後に残る子供達に命は繋がっていく。命は祖先から受け継ぎ未来に繋がっていくこと。このことが明白ならば、木の寿命のままに誠心誠意努力して保存していくことが、自然であり当り前のことであるということが分かっていただけると思う。 「仏法」: 宮大工の西岡常一さんを尋ねて弟子入りをお願いしたが果たせなかった。その時棟梁が言われた「仏法を知らずして堂塔伽藍を造るべからず」という言葉が強く心に残った。現在、鎌倉・瑞泉寺の境内に作業場を持つ。仏法の大切さを感じている。
社寺建築物に長年携わられ、保存改修工事にあたってこられた松本棟梁は、技術的なことよりも、その根本にあるものの「命」や「仏法」について多く語られました。われわれは目先の事象に左右されがちですが、修復・改修された旧柳下邸の居間で伺った棟梁のお話はものの「命」を改めて見つめ、考えるひと時となりました。
当日の様子は松本社寺建設のサイト(「宮大工のよもやま話」のコーナー「社寺松かわらばん第2号<棟梁が講師に!>」)にも掲載されています。
椅子座の導入: 洋館に対して和館、洋風に対して和風、椅子座に対して床座。そしておのおのの組み合わせが自由で豊富にあるが、どのように発展してきたか。明治天皇は洋装で椅子座をいち早く取り入れていた。椅子座の導入は家具を使う生活でもあった。 椅子座の浸透: 上流階級の椅子座の生活に対して庶民の一般住宅は床座の住宅が多かったが、上流階級の家に存在する洋間を持つという洋間へのあこがれから家の一部に洋間を持ち家具を持つという生活が少しずつ広まっていった。 椅子座の定着: 公団住宅に代表される2DKは台所と食堂を一体にし椅子座の生活を定着させ、椅子を使う生活が広く一般に広まっていった。現在は洋風も和風も椅子座も床座もいろいろとりまぜ各自いろいろ楽しんでいる時代になった。
その後質問など活発に行われ時間が足りないほどでしたが、閉会となりました。時代の流れの中から一間洋館を見直してみると新たな発見がたくさんあり興味深いものでした。
(報告:藤田靖子)